1型糖尿病でもサッカーを諦めなかった息子の話

家族のこと

父親として誇りに思うこと

はじめに

このブログでは先日、長女のことを書きました。スタージウェーバー症候群という病気を抱えながら介護福祉士になった娘の話です。

今回は長男のことを書きたいと思います。

長男は小学1年生のとき、突然1型糖尿病を発症しました。

長女の病気を経験した私たち夫婦は、一時期は「もう子どもを持たないでおこう」と話していました。しかし長女が小学1年生になり、無事に学校生活を送れるようになってくると、「長女のためにも兄弟がいた方がいいのではないか」という気持ちが芽生えてきました。そうして授かったのが長男です。

それだけに、順調に育っていた長男の突然の発症は、私たち夫婦にとって本当に衝撃的な出来事でした。

しかし長男は病気に負けませんでした。小学3年生からサッカーを始め、中学では部活でサッカーに打ち込み、そして自分が目標とした高校への合格を果たし、今もサッカーを続けています。

病気を抱えながらも目標に向かって歩み続ける息子の姿を、父親として記録しておきたいと思います。

第1章:突然の発症

① 夏休みに異変が起きた

長男が小学1年生の夏休みのことでした。突然、体の具合が悪くなりました。みるみるうちに痩せていき、喉が渇いて頻繁に水を飲むようになりました。食欲もなく、元気がなくなっていきました。

夏休み明けが近づいても体調が戻らず、学校にも行きたくないと言い始めました。

② 不登校を疑った親の心配

「学校で何かあったのだろうか」

私たち夫婦は、学校での人間関係や環境に問題があるのではないかと心配しました。もしかしたら不登校になってしまうのではないか、と。まさかこれほど深刻な病気が体の中で起きているとは、当時は想像すらしていませんでした。

③ 受診・そして入院へ

あまりにも様子がおかしいため、病院を受診することにしました。その日は妻と長男だけで病院に向かいました。しばらくして妻から連絡が入りました。診察の結果、1型糖尿病という診断が出たこと、そのまま即日入院になるということでした。

私は急いで病院に駆けつけました。病室に入ると、長男が泣きながら私に抱きついてきました。

「だいじょうぶだから、絶対に大丈夫だから。」

そう言いながら、小さな体をしっかりと抱きしめました。しかし心の中では、言いようのない不安に駆られていました。あの瞬間のことは、今でも鮮明に覚えています。

長女もスタージウェーバー症候群という病気を抱えて生まれてきました。その経験があっただけに、また子どもが病気を抱えることになったという事実は、私たち夫婦にとって二重の衝撃でした。それでも息子の前では不安を見せまいと、「大丈夫」という言葉を繰り返すことしかできませんでした。

第2章:1型糖尿病とはどんな病気か

① 1型糖尿病とは

1型糖尿病は、膵臓のインスリンを分泌するβ細胞が破壊されることで、体内でインスリンがほとんど作られなくなる病気です。インスリンは血液中の糖をエネルギーに変えるために必要なホルモンです。

よく耳にする2型糖尿病とは原因が異なります。2型糖尿病は生活習慣が主な原因ですが、1型糖尿病は生活習慣とは無関係に発症します。子どもでも突然発症することがあり、原因は自己免疫反応によるものと考えられています。

② 発症当初の管理:注射と指先採血の日々

診断を受けた当初、長男の血糖管理はインスリン注射と指先から血液を採取して血糖値を測定する方法でした。1日に何回もインスリン注射をしなければなりません。食事のたびにも注射が必要です。加えて定期的に指先に針を刺して血糖値を測定しなければなりませんでした。

幼い息子に、これだけのことを一生続けさせなければならない。親として、本当にいたたまれない気持ちでした。

学校では同じクラスの友達や保護者の方々にも説明をしました。給食のたびに保健室に行ってインスリン注射と血糖値測定が必要で、低血糖にならないか常に心配が続きました。

③ 「糖尿病」という病名への偏見が心配だった

もうひとつ、親として心配していたことがありました。「糖尿病」という病名に対する偏見です。長男が発症した1型糖尿病は、生活習慣とはまったく無関係です。幼い子どもが突然発症する、自己免疫疾患です。

長男は何ひとつ不摂生をしたわけではありません。それでも「糖尿病」という言葉だけで誤解されてしまうのではないか。そう心配していました。幸い、周囲の方からそのような心ない言葉をかけられたことは一度もありませんでした。

④ 医療技術の進歩に救われた

そんな日々が続く中、インスリンポンプとリブレという医療機器が登場しました。インスリンポンプは体に装着する小型の機器で、24時間継続的にインスリンを体内に注入します。リブレは腕に装着するセンサーで、スマートフォンをかざすだけで血糖値がリアルタイムで確認できます。

この2つの機器が登場したときは、本当に救われた思いがしました。毎日何度も針を刺さなければならなかった息子の苦労が、大幅に軽減されたのです。

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第3章:松本山雅との出会い

① 一枚の無料観戦チケット

長男がサッカーを始めたのは小学3年生のことでした。きっかけは学校で配られた松本山雅FCの試合の無料観戦チケットでした。「行ってみようか」という軽い気持ちで、家族で試合観戦に出かけました。

② 試合に食い入るように見つめていた息子

スタジアムに到着すると、長男の様子が変わりました。チャントを歌って声援を送るサポーターたちの熱気の中で、長男はそういった雰囲気に飲み込まれることなく、ただじっと試合を見つめていました。ピッチの上で繰り広げられるプレーのひとつひとつを、食い入るように集中して見ていたのです。

その横顔を見たとき、「この子はサッカーに本気で惹かれている」と感じました。

③ 「サッカーがやりたい」

試合が終わった後、長男が言いました。

「サッカーがやりたい。」

当時はまだインスリンポンプもリブレも使っておらず、インスリン注射と指先採血での管理をしていた時期でした。激しい運動中に低血糖になったらどうしよう。それだけが心配でした。

しかし息子の真剣な目を見て、私たち夫婦は応援することに決めました。主治医の先生に相談し、血糖管理をしながらサッカーを続けることへの了解をいただきました。練習前後の血糖測定、補食の準備、低血糖になったときの対応をコーチにも説明しました。こうして長男のサッカー人生が始まりました。

第4章:サッカーと血糖管理の両立

① サッカーをしながら血糖を管理する難しさ

サッカーは全身を使う激しいスポーツです。走り続けることでエネルギーを大量に消費し、血糖値が急激に下がることがあります。練習前には必ず血糖値を測定し、状況に応じて補食を摂ってからグラウンドに向かいました。

② インスリンポンプとリブレとの出会い

長男がサッカーを続ける中で、インスリンポンプとリブレという医療機器を使い始めることになりました。これは長男にとって大きな転機でした。サッカーの練習中も、リブレで血糖値の変化を把握しやすくなりました。

③ サッカー中はポンプを外している

ただしサッカーの練習や試合中は、接触プレーによる破損を防ぐためにインスリンポンプを外しています。練習が終わってからポンプを再装着するというルーティンが定着しました。

また激しい動きの中でリブレが腕から外れてしまうことが数回ありました。接触プレーでぶつかった際に外れてしまうのです。しかし長男はそういった不便も受け入れながら、サッカーを続けてきました。

④ 主治医の先生を信頼して

サッカーを続けることができているのは、主治医の先生の支えがあってこそです。主治医の先生が「きちんと管理できていれば大丈夫」と言ってくださったことが、私たち夫婦にとって何よりの安心でした。長男自身も、血糖管理の大切さをしっかり理解した上でサッカーに取り組んでいます。

第5章:中学・そして高校へ

① 中学校での部活サッカー

小学校でサッカーを始めた長男は、中学校でも迷わずサッカー部に入りました。何よりも良い仲間に恵まれました。1型糖尿病という病気を抱えながらも、仲間たちの中で生き生きとプレーする息子の姿は、父親として本当に嬉しいものでした。

② より高いレベルを目指したいという気持ち

中学でサッカーを続けるうちに、長男の中に新たな目標が生まれてきました。

「もっと高いレベルでサッカーがしたい。」

長男は自分から「サッカーと学力、両方をより高いレベルで追求できる高校に行きたい」と話すようになりました。小学1年生のときに1型糖尿病を発症し、病気と向き合いながら生きてきた息子が、自分の力で夢を描いている。その姿を見て、親として胸が熱くなりました。

③ 目標の高校への合格

長男は勉強にも力を入れました。サッカーに打ち込みながら、学業もしっかり取り組む。その両立は簡単ではなかったと思います。そして見事、自分が目標としていた高校への合格を果たしました。

合格の知らせを聞いたとき、妻と二人で本当に喜びました。小学1年生の夏休みに突然病気になり、病院のベッドで泣きながら私に抱きついてきたあの子が、自分で目標を決め、そこに向かって努力し、夢を掴んだのです。

④ 今の長男を見て感じること

高校でも長男はサッカーを続けています。インスリンポンプとリブレを装着してグラウンドに立ち、サッカーボールを追いかけている。練習前にはポンプを外し、終わったら装着する。そのルーティンを当たり前のようにこなしながら、サッカーに情熱を注いでいます。

きちんと目標を設定し、そこに向けて今を一生懸命に過ごしている息子の姿を見て、頼もしく思っています。

まとめ|病気があっても夢は持てる

最後まで読んでいただきありがとうございます。

この記事では、小学1年生で1型糖尿病を発症した長男が、病気と向き合いながらサッカーを続け、目標の高校への合格を果たした歩みをお伝えしてきました。

出来事内容
小学1年生夏休みに1型糖尿病を発症・入院
小学3年生松本山雅の観戦をきっかけにサッカーを始める
小学生の間インスリン注射・指先採血で管理しながらサッカーを続ける
中学生サッカー部に入部・良い仲間と出会う
中学生インスリンポンプ・リブレを使い始める
高校受験サッカーと学力、両方のレベルが高い高校を目標に設定
高校合格目標の高校への合格・下宿での一人暮らしを開始
現在高校でもサッカーを続けている

① 同じ病気を抱えるお子さんの親御さんへ

発症当初は「これから一生インスリンが必要な生活になる」という現実を受け入れるのに時間がかかりました。しかし医療技術は進歩しています。インスリンポンプとリブレという機器のおかげで、息子の日常はずいぶん楽になりました。そして何より、長男自身が病気と向き合い、前を向き続けてくれました。

② 1型糖尿病について知ってほしいこと

1型糖尿病は生活習慣とはまったく無関係な病気です。不摂生が原因ではありません。子どもでも突然発症することがある自己免疫疾患です。「糖尿病」という言葉だけで誤解されることがないよう、この記事を通じて少しでも多くの方に正しく知っていただければ幸いです。

1型糖尿病の研究や患者支援に取り組む日本IDDMネットワークでは寄付を受け付けています。同じ病気で悩む子どもたちと家族のために、ご支援をいただけますと幸いです。

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③ 下宿での一人暮らしも始まった

目標の高校に合格した長男は、高校進学に伴い下宿での一人暮らしも始めることになりました。

1型糖尿病の血糖管理をしながら、初めての一人暮らし。親元を離れて自分で食事の管理やインスリンポンプの取り扱いをしていくことになります。正直、心配がなかったわけではありません。

しかし長男は新しい環境にも前向きに飛び込んでいきました。長女・長男と、家族の中で病気を抱えながらも一人暮らしに挑戦する子どもが二人目になりました。それぞれが自分のペースで、自分の人生を歩み始めています。

④ 父親として今感じること

病院のベッドで泣きながら私に抱きついてきたあの小さな息子が、今や自分で目標を設定し、そこに向かって日々を過ごしています。1型糖尿病と向き合いながら、インスリンポンプとリブレを装着してグラウンドに立ち、サッカーボールを追いかけている。その姿を見るたびに、父親として誇らしく、そして頼もしく思います。

病気があっても夢は持てる。目標に向かって歩み続けることができる。長男がそのことを身をもって教えてくれています。

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※本記事は筆者の実体験をもとにした情報提供を目的としています。医療に関する詳細は主治医にご相談ください。

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